2025年2月25日

はじめに
内科担当の小林登です。
当院では、幅広い内科診療に対応しておりますが、その中でも、
・糖尿病内科
・消化器内科、肛門内科
この2つについて、特に力をいれて診療をしております。
今回はその一つである糖尿病の薬についてのお話です。
医学の進歩はめまぐるしく、糖尿病の領域の薬で、
・週に1回のインスリン製剤
・SGLT2阻害剤→「糖尿病の薬~心臓、腎臓にも良いSGLT2阻害剤~」をご覧ください。
・GLP-1受容体作動薬
上記のような薬剤の話題が近年多く、実際に当院でも多くの患者さんに処方しています。
今回のお話は、GLP-1受容体作動薬について、すこし詳しくお話します。
GLP-1受容体作動薬とは?
体内でインスリンに対して重要な役割を持つGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンがあります。
これは、食事を摂ると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促進する役割をしています。
もう少し詳しく、わかりやすく。
食事をして、消化管の中に食べ物が入ってくると、小腸のL細胞からGLP-1が分泌され、その一部は、血液の中を流れてすい臓に運ばれます。
すい臓にたどりついたGLP-1はここで、すい臓のβ細胞表面にあるGLP-1の鍵穴 (受容体) にくっつき、β細胞内からインスリンを分泌させます。
「インスリンを出して!」と呼びかけるわけです。
この呼びかけに応じて、すい臓からインスリンが分泌されると、血糖値が下がります。
このGLP-1は、血糖値が高い場合にのみインスリンを分泌させる特徴があります。
つまり血糖値が高くないときにはGLP-1は分泌されず、インスリンも出てきません。
今回、説明するGLP-1受動体作動薬はこの小腸から分泌される GLP-1のかわりにGLP-1の鍵穴 (受容体) にくっつくことができる薬剤です。
つまり、GLP-1受容体作動薬はGLP-1と類似した働きをしてくれる訳です。
GLP-1受容体作動薬の種類
GLP-1受容体作動薬には、注射薬と内服薬があり、次のような種類があります。
<注射薬>
ビクトーザ(リラグルチド)
リキスミア(リキシセナチド)
バイエッタ(エキセナチド)
トルリシティ(デュラグルチド)
オゼンピック(セマグルチド)
*マンジャロ(チルゼパチド):厳密にはGIPというホルモンも含む。
*ゾルトファイ(インスリン+ビクトーザ)
<内服薬>
リベルサス
様々な薬剤が上市されていますが、当院では多くの場合、
・マンジャロ
・オゼンピック
・ゾルトファイ
・リベルサス
上記の薬剤を使用しています。
注射にはそれぞれ特有の特徴があります。
内服薬は手軽ではあるのですが、飲み方に注意が必要なため、当院では導入前に必ず、しっかりとした内服指導を行っています。
患者さんの病状や生活スタイル、食習慣、シニアの方に関しては、家族のサポートも考慮し、おひとりおひとりに適した薬剤を選択をおこなうよう心がけています。
GLP-1受容体作動薬の様々な効果

参照:Nature Reviews Nephrology volume 13, pages605–628 (2017)
上記の図はGLP-1の様々な臓器への影響を現したものです。
矢印の方向をみて頂くと、膵臓だけでなく、心臓、脳、腎臓、肝臓など様々な臓器に影響があることがわかると思います。
このようにGLP-1には、インスリンを分泌させる作用のほかにもさまざまな作用があります。
すい臓に対しては、インスリンの分泌を促進させるほかに、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制します。
また、すい臓のβ細胞を増やす(増殖)などの作用が動物で確認されています。
そのほかの作用として、摂取した食物の胃からの排出を遅らせる作用や食欲を抑える作用などもあります。
他コラム「糖尿病の薬~心臓、腎臓にも良いSGLT2阻害剤~」では、SGLT-2阻害剤の血糖降下作用以外の効果をお話しました。
GLP-1受容体作動薬にも、同様に、心保護作用、腎保護作用、脳の神経保護作用などの可能性が言われています。
当院でのGLP-1受容体作動薬の使い方
当院では、既存の糖尿病の内服薬で効果が不十分の場合にGLP-1受容体作動薬の開始をお勧めしています。
もともとの薬剤からの変更に際し、薬剤費が上昇するケースが多く、おおよその薬剤を事前に説明し、了承されてから薬剤を変更しています。
先ほど、GLP-1受容体作動薬といっても、様々な種類がある為、
生活スタイルやそこに至る診療経過を踏まえ、おひとりおひとりに適した薬剤の選択を心掛けています。
注射を開始する際に、「わたしにできるかな?」と不安を持たれる方もいますが、当院では、90歳の方でも、自己注射を行っている方もいます。
だれにもできるわけではないかもしれませんが、注射開始時には、私だけでなく、当院スタッフから手技指導も行い、2回目以降も、定期的に注射が打てているかの確認を行います。
そのため、不安もあるかと思いますが、注射の必要があるといわれた方は、まず一度取り組んでみてください。
・意外と簡単だった。
・これならつづけられそう。
・背中を押してくれてありがとう。
という声も頂きますので、ぜひ1歩踏み出してみてください。
当院での糖尿病診療

当院では、糖尿病予備軍ともいわれる境界型糖尿病の方からインスリンなどの注射製剤を必要とする方まで診療可能です。
*現在の医療機関で中々HbA1cが低下しないので心配だ…。
*健康診断で糖尿病といわれているが、どこのクリニックにいけばいいのか分からない。
*引っ越しで武雄市にいくが、どこのクリニックにしようか迷っている。
*両親が糖尿病なので、自分も糖尿病になるか心配だ…。
など、いろいろな理由で当院を受診される方がおられます。
まずは一度受診して、お悩みのことをご相談ください。
●以下に該当される場合には、他の連携医療機関へご紹介させて頂きます。
・1型糖尿病の方
・妊娠糖尿病、糖尿病合併妊娠の方
・初めて糖尿病を指摘された方で入院を必要とする方
・インスリンポンプ療法中の方