2025年6月28日

はじめに
内科担当の小林登です。
当院は幅広い内科診療を行っておりますが、「おしり」の診療についても力をいれております。
おしりの病気の一番大きな問題は「はずかしくて、なかなか病院にいけない」ことです。
中には、決死の覚悟で外来を受診される方もおられます。
そのため、当院での診察の際には、診察室での問診の後に、別室へ移動頂き、プライバシーに配慮した診察室で診察を行います。
今回は肛門周囲膿瘍について、やさしくお話します。
肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)とは?

肛門周囲膿瘍とは、肛門に膿瘍(膿がたまる状態)を形成する病気です。
膿の原因としては、肛門を少し入ったところにある小さな穴から細菌が入って肛門周囲が化膿することが原因といわれています。
病院を受診されるきっかけとしては、
・突然の
・おしりの腫れ
・おしりの痛み
・40度の発熱を伴うおしりの痛み
などの相談を受けて、診断にいたることが多いです。
膿瘍(膿の溜まり)は大きくなると、自壊(勝手に破れる事)することがあります。
その場合には、
・おしりからの膿
を症状に病院を受診されることもあります。
症状は?

肛門周囲膿瘍はできる膿瘍の皮膚からの深さで症状が異なります。
・皮膚から浅いところ(低位)にできる膿瘍:激しい痛み
・皮膚から深いところ(高位)にできる膿瘍:腰に鈍い痛み
伴います。
低位の場合には、肛門周囲膿瘍の診断もむずかしくなく、スムーズに治療にすすむことがほとんどです。
しかし、高位の場合には、症状がはっきりとせず、高熱と腰痛で悩む方が、検査を進めるうちに肛門周囲膿瘍の診断にいたる方がいます。
医療者も肛門周囲膿瘍と気づかず、中々診断がつかない場合もあります。
その為、先ほどの症状が当てはまる方は、早めに肛門科を受診して下さい。
原因は?

原因としては、肛門を少し入ったところにある小さな穴から細菌が入って肛門周囲が化膿することが原因といわれています。
その膿の溜まりと皮膚が交通しトンネルを痔瘻と呼びます。
これを、crypt-glandular infection theoryと言います。
さらに、膿の溜まりができる原因として、「下痢」があります。
↑のように、以前の上記の医療コラムでも触れましたが、
おしりのトラブルは便のトラブルと隣り合わせです。
そのため、
・痔瘻の方
・肛門周囲膿瘍を繰り返す方
については、下痢を起こさないように日頃から便の手当をする必要があります。
・過度の飲酒
・刺激物の過剰摂取
・カフェインの過剰摂取
などが下痢の原因と言われていますので、ご注意ください。
治療は(初期治療)?

肛門周囲膿瘍治療はとにかく切開して膿を出すことです。
当院では、
・診断がついた場合
・疑わしい場合
などに、病状を説明した後、当日に切開術を施行しています。
局所麻酔を行った後、切開を行いますのでご安心ください。
抗菌薬(細菌を殺す薬剤)のみでは、溜ってしまった膿を充分に治療することが困難であり、効果が不十分となるため、おすすめしません。
先ほど説明したように肛門周囲膿瘍には、
・低位
・高位
があります。
最初の治療の基本方針は違いがないのですが、切開術の難易度が異なります。
高位の場合には、激痛を伴う場合があるため、局所麻酔以上の十分な麻酔が必要となります。
その場合には、連携する病院へ紹介することとなります。
治療は(根治治療)?
肛門周囲膿瘍の原因を取り除く治療となります。
原因の多くが痔瘻であるため、痔瘻(トンネル)を取り除く手術です。
また、痔瘻になると、トンネルから膿が出てくるだけではありません。
痔瘻は、長年放置するとトンネルがまれにがん化することもあります。
そのため、自己判断せず、まずは肛門科の先生に相談して下さい。
当院では手術になる場合には、連携する病院へ紹介することとなります。
さいごに

今回は肛門周囲膿瘍についてお話しました。
当院での診察の際には、問診の後に、別室へ移動頂き、プライバシーに配慮した診察室で診察を行います。
また、いぼ痔(痔核)、あな痔(痔瘻)、きれ痔(裂肛)、直腸脱などの肛門疾患について、適切な診断を行い、治療を行います。
肛門周囲膿瘍などの緊急に処置を要する病気については、当日処置を行いますので、お気軽にご相談ください。
内科的な治療が奏功しない場合や、早い段階で手術適応と判断した場合には、連携医療機関へ紹介させていただきます。
・近隣の医療機関で相談するのが恥ずかしい…
・肛門科にいくのに抵抗がある…
などのお悩みがある方も、この1年で徐々に受診頂けるようになってきました。
おしりでお悩みの方は、まず一度当院へご相談ください。