2025年1月14日
はじめに
当院では幅広い内科診療を行っております。
その中で患者さんの多くを占めるのが、糖尿病です。
私自身、前の勤務先で糖尿病専門外来を担当しており、診療する中で、糖尿病の治療薬(飲み薬・注射)が年々進歩していることを肌で感じておりました。
進歩している糖尿病の治療薬ですが、今回は、SGLT2阻害剤についてお話してみようと思います。
糖尿病の治療薬
糖尿病の治療薬には、下のように複数あります。
・スルホニルウレア薬(SU薬)
・速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
・DPP-4阻害薬
・GLP-1受容体作動薬
・ビグアナイド薬
・チアゾリジン薬
・α-グルコシダーゼ阻害薬
・SGLT2阻害剤
・イメグリミン
糖尿病と診断された方への薬の選択は、病気の状態や患者さんの状態(肥満、やせ、認知機能低下など)、患者さんの生活習慣、薬剤の値段などを考慮し、主治医が選択します。
複数の薬剤を処方することもあり、適宜、合剤(複数の薬剤をあわさった薬剤)を使って患者さんの負担を考えて診療にあたっています。
各薬剤に特有のメリット・デメリットがあるので、治療薬の選択の際には、患者さんへ説明しています。
SGLT2阻害剤とは?
約10年前に発売されたこの薬剤は、腎臓でのブドウ糖の再吸収を阻害し、血液中の糖を尿から排泄させることで、血糖値を下げる効果を発揮します。
なんと70~80g(スティックシュガー7~8本分相当)のブドウ糖を尿から排泄します!
その影響で、SGLT2阻害剤を飲んでいる方は、尿検査で尿糖3+~4+が出てしまうので、健康診断などの際には、必ず申告するようにしてください。
SGLT2の効果ですが、HbA1cを0.6~1.2%低下させることが報告されています。
先に説明した糖尿病の治療薬の中には、血糖降下だけの作用の薬剤も多いですが、このSGLT2阻害剤は、体重減少作用、心保護作用、腎保護作用などの効果が報告されています。
SGLT2阻害剤の心保護作用(心臓を守るはたらき)
SGLT2阻害薬は6種類発売されています。
その内の2種類は慢性心不全に対する適応があります。
その理由としては、2種類の薬剤が、心不全の患者さんを対象とした研究で、
・心血管死リスクの抑制
・心不全による入院のリスクを低下
上記をみとめたためです。糖尿病の治療薬でもありますが、心臓に対してもいい影響があることから、糖尿病のない患者さんでも、心臓の病気を持っている方には、積極的に処方されています。
SGLT2阻害剤の腎保護作用(腎臓を守るはたらき)
糖尿病の合併症のひとつに糖尿病性腎症がありますが、これは、糖尿病が細かい血管をボロボロにしてしまうことで、細かい血管の集合体である腎臓が悪くなってしまうためです。
このSGLT2阻害剤が、この糖尿病性腎症の進行速度を遅くしてくれることが分かっています。しかし、SGLT2阻害薬の内服開始直後は、“initial drop”(一見腎臓が悪くなってしまっているようにみえること)がみられることが知られています。
薬の特性を知った上でこの薬剤を処方していれば、腎機能を悪化させてしまったのでは!と焦ることはないのですが。
ただし、腎臓が非常に悪い方(人工透析間近といわれている方)については、この薬剤は慎重に投与する必要があり、注意が必要です。
SGLT2阻害剤の副作用
SGLT2阻害薬の主な副作用として尿路感染症、正常血糖ケトアシドーシスがあります。
尿路感染症については、尿に多量にブドウ糖が含まれることで細菌感染が悪化しやすいためです。そのため、高齢の女性の方や膀胱炎の既往がある尿路感染のリスクが高い方には、慎重に投与を行っております。また、陰部のかぶれなどがでることもありますので、注意を要します。とてもいい薬剤ですが、中止せざるを得ない方もいるのが実情です。
正常血糖ケトアシドーシスについては、SGLT2阻害薬を服用している方が、インスリンが不足した場合に起こるケトアシドーシスです。といってもピンときませんよね。SGLT2阻害剤を内服している方が、過度の糖質制限を行ってしまう場合や体調不良で食事摂取不良の場合に、救急搬送されてしまうケースがありますので、ご注意ください。
当院での糖尿病診療
当院では、糖尿病予備軍ともいわれる境界型糖尿病の方からインスリンなどの注射製剤を必要とする方まで診療可能です。
*現在の医療機関で中々HbA1cが低下しないので心配だ…。
*健康診断で糖尿病といわれているが、どこのクリニックにいけばいいのか分からない。
*引っ越しで武雄市にいくが、どこのクリニックにしようか迷っている。
*両親が糖尿病なので、自分も糖尿病になるか心配だ…。
など、いろいろな理由で当院を受診される方がおられます。
まずは一度受診して、お悩みのことをご相談ください。
●以下に該当される場合には、他の連携医療機関へご紹介させて頂きます。
・1型糖尿病の方
・妊娠糖尿病、糖尿病合併妊娠の方
・初めて糖尿病を指摘された方で入院を必要とする方
・インスリンポンプ療法中の方