2025年7月07日

はじめに
皮膚科担当の小林佑佳です。
夏場や蒸れやすい靴の使用で増える「水虫」。
水虫と聞くと、
「自分には関係ない」
「なんとなく恥ずかしい病気」
と思う方も多いかもしれません。
でも実は、日本人の5人に1人はかかっているといわれる、非常に身近な感染症です。
正しい知識と予防、早期の治療で再発も防げます。
今回は、“身近だけど誤解されがちな病気”である水虫について、治療方法を中心にやさしく解説します。
「塗れば治る」は本当?~治療薬について考える~

水虫(足白癬)や爪白癬は、白癬菌というカビの一種によって引き起こされる感染症です。
多くの方がドラッグストアで購入できる塗り薬で自己治療を試みますが、すべてのケースに市販薬が有効というわけではありません。
特に爪白癬では、内服薬(飲み薬)や爪専用の塗り薬の使用が必要になります。
塗り薬(外用薬):軽症〜中等症に有効だが注意も必要
水虫の治療では、まず外用薬(塗り薬)が選択されることが多いです。
● 医療機関で処方される外用薬の特徴
- 抗真菌成分の種類や濃度が高く、より効果的。
- 患部の状態に応じて軟膏、クリーム、ローションなど形状を使い分ける。
- 症状が見えなくなっても、一定期間(通常は1~2か月以上)の継続塗布が必要。
● 市販薬との違い
- 市販薬にも有効な抗真菌成分が含まれていますが、症状の重症度や爪白癬には対応できない場合が多い。
- 診断を受けずに使うと、正確な治療の妨げになることがあります。
● 重要な注意点:市販薬の使用前にまずは皮膚科へ
外用薬を市販で使用していると、検査(顕微鏡検査や培養検査)で白癬菌が検出されにくくなることがあります。
誤診や診断の遅れにつながるため、受診前にはなるべく市販薬の使用を控えていただくことが望ましいです。
爪白癬の治療は?~塗り薬と飲み薬~

市販の外用薬では治療が難しい症例、その代表が爪白癬です。
治療法には、塗り薬と飲み薬があります。
塗り薬も爪専用の塗り薬です。
水虫の塗り薬は、足の皮膚に使いものと、爪に使うものでは効果の届き方が大きく違います。
足用の塗り薬は、爪には十分に聞かないことが多いため、「ついでに爪にも塗っておこう」は、実はあまり意味がなく、時間だけがかかってしまうことが多いのです。
爪の中に入ってしまった菌には、体の中から効く飲み薬(内服薬)と爪に塗って外から効かせる塗り薬(外用薬)の2つの方法があります。
それぞれに合う薬があり、その代表的なのが、
・ネイリン(飲み薬)
・ルコナック(外用薬)
この2つの特徴を見ていきましょう。
ネイリンってどんな薬?

ネイリンは、飲むタイプの薬で、体の中から白癬菌に働きます。
血液を通して爪の中まで薬が届き、爪の奥の方や厚くなってしまった爪にも効果が期待できます。
また、飲み終わってもしばらくは爪の中に薬の効果が残ります。
さらに従来使われてきた飲み薬(例:イトラコナゾール、テルビナフィン)に比べて、肝機能への負担が少ないとされている点も特徴です。
*ただし個人差もあり、定期的な血液検査が必要とまります。
▼ 特徴
- 1日1回1カプセル内服します。
- 副作用が比較的少なく、長期服用に向いている。
- 爪の奥深くまで成分が浸透しやすく、治療効果が持続する。
- 定期的な血液検査を行います。
▼ 治療期間
- 内服期間は12週間です。
ルコナックってどんな薬?

ルコナックは塗るタイプの薬で、毎日爪に塗って使います。
塗るだけなので、体の中には入りにくく、副作用が少ないのがメリットです。
肝臓の機能が悪い方や飲み合わせの悪いお薬を内服されている場合に選択します。
ただし、爪が厚かったり、菌が奥まで入り込んでいたりする場合は、薬が届きにくくて治りにくいこともあります。
▼ 特徴
- 1日1回、爪に塗るお薬です。
- 毎日、お薬を塗り続けることが必要です。
- 薬液が皮膚について場合は、爪の周りをふき取ってください。
▼ 治療期間
- 内服期間は12週間となっています。
- 白癬菌を殺菌しても一旦変色、変形した爪は元に戻らないため、健康な爪の状態になるには新しく爪が生え変わる必要があります。
- 足の爪が生え変わるには1年~1年半かかるといわれています。
どっちを選べばいいの?
症状や体の状態によって、どちらが合うかは変わります。診察と受けて、医師と相談しながら決めることが大切です。
日常で気をつけること

足は毎日、指の間や爪の周りもやさしく丁寧に洗い、しっかり乾かしましょう。
使用済みのタオルやバスマット、スリッパは家族との共用を避けましょう。
また、蒸れにくい靴・通気性のある靴下を選んでください。
さいごに~正しい診断と治療で根治をめざしましょう~

水虫や爪白癬は、市販薬では根治が難しいことも多い病気です。
自己判断で長引かせてしまうと、周囲への感染や再発のリスクも高まります。
特に爪白癬は、放置すると他の爪や家族にも感染する可能性があるため、早めの受診と正しい診断が大切です。
少しでも気になった時が受診のタイミングです。
ぜひ一度当院皮膚科へご相談ください。