2025年1月27日
はじめに
寒がりになった、足のむくむ、体重が増えてきた…など、女性・男性問わず色々な症状でご相談を受けることがあります。
その際、当院では甲状腺の触診を行い、甲状腺ホルモンの測定を勧めています。
なぜならまずは疑わないことにはこの病気は診断ができないためです。
今回お話しする橋本病、なんと「女性の約10%」がかかっているとも言われています。
甲状腺とは
甲状腺はのどぼとけの下にある蝶が羽をひろげたような形をした臓器です。
女性と男性で甲状腺の位置は異なり、男性の方が低い位置にあるとされています。
正常の甲状腺は厚みがなくやわらかいため、通常はさわることはありません。
普段、自分自身で意識をすることのない臓器かと思いますが、実は非常に大事な「甲状腺ホルモン」を分泌しています。
甲状腺ホルモンの働き
甲状腺ホルモンは、カラダ全体の新陳代謝を促進する働きがあります。
私は外来で「甲状腺ホルモンは体のアクセルのようなもの」と説明しています。
甲状腺ホルモンは、多すぎたり少なすぎたりしないようバランスが保たれていますが、甲状腺の働きに異常があらわれると、そのバランスが崩れてしまいます。
ホルモンが多すぎる場合:甲状腺中毒症
ホルモンが少なすぎる場合:甲状腺機能低下症
と呼ばれるます。
また、この甲状腺ホルモンの主原料はヨード(ヨウ素)です。
日本では海藻などの海産物を食べる文化があるので、欠乏することはありません。
しかし、外国の山間部ではヨード不足で甲状腺ホルモンが低下したりすることがあり、予防策で食塩にヨードが添加されている地域もあります。
橋本病(慢性甲状腺炎)
40歳~50歳の女性に多い病気です。
明治の医師、橋本策先生の名をとって「橋本病」といわれます。
診察では甲状腺は硬く触れることがあります。
甲状腺ホルモンが低下している状況かつ甲状腺へ自己抗体(自分自身の抗体)が陽性の場合に診断します。
甲状腺ホルモンが減少することでいろいろな症状がでてきます。
寒がり、皮膚の乾燥、汗をかきにくくなった、体重がふえてきた、筋力が低下してきた、血圧が低下してきた、ぼーっとする、便秘傾向、月経過多、難聴、思考力低下、認知機能低下、貧血傾向などです。
潜在性といって、症状が明らかなでない状況で診断できれば、チラーヂンS(甲状腺ホルモン)を内服すれば、大きな問題なく経過される方がほとんどです。
しかし、粘液水腫性昏睡や橋本脳症など重篤化される方もおられます。
また、橋本病の方で経過を見ている途中で、甲状腺が急激に大きくなってきた場合には、悪性リンパ腫がみつかる場合がありますので、注意が必要です。
橋本病以外の原発性甲状腺機能低下症
・先天性甲状腺低形成
・ヨード欠乏
・甲状腺の病気に対する手術・放射線治療後
・免疫チェックポイント阻害剤などによる薬剤性
などがあります。
多くの場合、大きな病院で治療を受ける過程で診断がついており、当院を受診されて初めて診断がつくことは稀です。
しかし、上記のような治療をうけておられ、心配な症状などがありましたら、一度ご相談ください。
当院での甲状腺診療
当院では、寒がりになった、足のむくむ、体重が増えてきた…など、女性・男性問わず色々な症状でご相談を受け、疑わしいと判断した場合には、甲状腺ホルモンを測定しております。
その結果、甲状腺ホルモンが上昇・低下していた際には、超音波検査、抗体検査を追加し、内服治療を開始する流れで診療を行っております。
甲状腺診療において、妊娠をご希望の方や、薬剤に対してアレルギーをお持ちの方、重症例については、連携医療機関へご紹介させて頂きます。