2025年2月03日
はじめに
皮膚科担当の小林佑佳です。
最近話題なんです。帯状疱疹ワクチン。
皆さんも一度は耳にされたことがあるかと思います。
何が話題かというと、2025年より定期接種になります。
*定期接種:法律に基づいて市町村が実施するワクチン
簡単に言えば、このワクチンに対して自治体による助成がでます。
日々診療する中でも、「友人が帯状疱疹になって辛そう…。」などの相談を受けることがあります。
ご相談いただいた方には今までワクチン接種を勧めていましたが、いままで全額負担だったのです。
*自治体によって、助成がでていたところもあります。
定期接種になった事で、多くの方にこのワクチンが届くようになれば!という思いで、今回のコラムを書いてみますね。
帯状疱疹ってどんな病気?
体の左右どちらか一方に、痛みと伴う赤い斑点と水ぶくれが帯状にあらわれます。
頭や顔にでる方もあれば、体や足、おしりにでる方もいます。
ピリピリと刺すような痛み(急性期痛)が生じ、夜も眠れないほど激しい場合も。
多くは、皮膚症状が治ると痛み(急性期痛)も消失しますが、神経損傷により痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」という合併症が残るのです。
この「帯状疱疹後神経痛」ですが、
・皮膚症状が重症
・夜も眠れないほど痛みが強いがある
・60歳以上の方
に残る可能性が高いと言われています。
帯状疱疹の原因ですが、体内に潜んでいた「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって起こります。
この「水痘・帯状疱疹ウイルス」は水ぼうそうの原因のウイルスです。
つまり、水ぼうそうにかかったことがある人なら、だれでも帯状疱疹になる可能性があります。
帯状疱疹は80歳までに3人に1人はかかる病気で、特に50歳以上では急激に発症率が上昇するといわれています。
また、高血圧・糖尿病などの病気がある方は、帯状疱疹の発症リスクが高くなると言われています。
ある調査では、
・高血圧の方は、発症リスクが約1.9倍
・糖尿病の方は、発症リスクが約2.4倍
というデータの報告があります。
もし帯状疱疹にかかってしまったら?
治療の基本は、抗ウイルス薬の飲み薬です。
抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑えることにより、急性期の皮膚症状や痛みを和らげてくれます。
内服薬での対応も可能ですが、年齢や重症度、発症する部位によっては、入院での点滴治療を薦めることもありますので、診察室でご相談いたします。
抗ヘルペスウイルス薬は、できるだけ早く開始した方が、治療効果が期待できます。
痛みが先に現れ、続いて皮膚症状がでる方もいるため、心配な場合は早めにご相談ください。
また、帯状疱疹にかかった方の日常生活での注意点もあります。
・できるだけ安静に。
・患部は温めるようにしましょう
→患部が冷えると痛みがひどくなるため
・触らないようにしてください
→水ぶくれが破れると細菌感染のリスクとなるため
通常、帯状疱疹が他の人にうつることがありませんが、乳幼児には水ぼうそうとしてうつることがありますので、注意が必要です。
帯状疱疹の予防接種“シングリックス”とは?
シングリックスは、帯状疱疹の予防に用いられるワクチンです。
シングリックスは、ウイルスそのものを弱毒化した生ワクチンではなく、帯状疱疹ウイルスの表面に存在するタンパクと抗原とした乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチン)です。
そのため、免疫機能が低下する病気にかかっている方や免疫力を抑制する治療を受けている方にも安心して接種が可能です。
シングリックスの効果
接種者の10年間を観察し、解析した臨床試験の結果を説明します。
帯状疱疹の発症予防の効果は、
・50歳以上では97.2%
・70歳以上では89.8%
また同じ臨床試験から、ワクチン接種により「帯状疱疹後神経痛」の発症リスクが減少する可能性が報告されています。
このシングリックスですが、帯状疱疹の予防以外にもさらなる利点があることがいわれています。
一例ですが、認知症の発症リスク低下と関連しているとも。
認知症との関連があるかもなんてびっくりですよね。
シングリックスの投与方法
・50歳以上の方を対象
・2回接種(2か月あけて)
・筋肉注射
*帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方も適応があります。
1回目の接種から2か月を超えた場合でも、6か月後までに2回目を接種するようにしてください。
シングリックスの接種後に、気を付けること、副作用について
これは、他のワクチンと同様のことですが、
接種した直後あるいは接種後に、注射の痛み・恐怖などによる刺激により、心拍数が落ちたり血圧が下がったりすることがあります(迷走神経反射)。
気分が悪くなったり、めまいやふらつきなど起こったりすることもあるため、接種後しばらくは体調の変化に気をつけてください。
接種当日は、激しい運動を避け、接種部位を清潔に保つように心がけてください。
入浴は構いませんが、接種部位を強くこすらないようにしてください。
頻度の高い副作用としては、接種部の痛みや腫れ、赤みなどがあります。
その他、嘔吐・下痢、頭痛、筋肉痛、倦怠感、発熱なども報告されています。
シングリックスの費用
はじめにお話ししたように、2025年より帯状疱疹ワクチンが定期接種となります。
・65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳
上記の年齢の方が対象となる予定です。
公費助成の金額などの詳細はまだ公表されておらず、わかり次第、HPなどでおしらせしますね。
*上記以外のご年齢の方については、保険適応外の薬剤のため、全額自己負担となります。
当院のシングリックス接種費用は1回22,000円(税込み)です。
*自治体によっては独自の公費助成がある場合がありますので、一度各自治体へお問い合わせください。