2025年4月07日

はじめに
内科担当の小林登です。
前のコラム「生活習慣病〜気づかぬうちに深刻に〜」にて、生活習慣病のうち、がんを除くと多くの死因を占めるのが、心臓病、脳梗塞や脳出血などの病気です。とお話しました。
また、その原因の多くが動脈硬化であることもお話しました。
今回はその動脈硬化の評価に役立つ検査として、「頸動脈エコー」を紹介したいと思います。
なぜ動脈硬化の評価するのか?

動脈硬化とは、動脈が硬くなって弾性力が失われた状態です。
血管の壁にプラークがついて血管内が狭くなったことにより、血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなります。
また、動脈硬化の原因として、加齢、喫煙、飲酒、脂質異常症、高血圧、糖尿病などがあります。
動脈硬化が起こると、
心臓病:心筋梗塞、狭心症
脳血管障害:脳梗塞、脳出血
腎臓病:慢性腎臓病
末梢血管:閉塞性動脈硬化症
などの大きな病気につながってしまいます。
したがって、動脈硬化の程度を評価し、悪化を防ぐための検査として、“動脈自体を詳細に観察できる”頸動脈エコーは非常に有用と言えます。
頸動脈エコーとは?
頸動脈エコー検査(超音波検査)とは、首の動脈(頸動脈)の状態を画像で確認する検査です。
動脈硬化の有無や程度、プラーク(粥腫)の有無や状態などを調べ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを評価します。
X線(レントゲン)検査のような被ばくがない為、体への負担があまりありません。
検査は、ベッドに寝た状態で受け、約20分程度です。
検査日はできるだけ首まわりをすぐに開けられる、あるいは脱ぎ着がしやすい服装で受診しましょう。
頸動脈エコーでわかること

頸動脈エコーで分かることは、大きく上の図のように、3つに分類されます。
以下、それぞれ詳しく説明します。
①IMT(Intima-Media Thickness):内膜及び中膜の厚み
IMTは、内膜及び中膜、いわゆる”血管の壁”の厚みのことを言います。
IMTは厚い程、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクが高いと報告されています。
特に総頚動脈(首の一番太い動脈)の最大IMTが0.1mm厚くなると、心筋梗塞を発症するリスクが11%、脳梗塞を発症するリスクが18%増加するという報告もあります。
したがって、IMT値は、将来、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスク評価に用いることができます。
さらに、生活習慣病のお薬での治療により、IMTの肥厚の進展を抑制したという報告もあるため、生活習慣病の治療を行っている患者さんでは、治療効果の判定としても用いることができます。
②プラークの性状
プラークとは、内膜及び中膜の表面に突出する1.1mm以上の隆起病変を言います。
1.5mm以上のプラークを認める場合には、プラークの大きさ、表面や内部の性状、可動性など、さらに細かく評価を行います。
特に、可動性プラーク(動くプラーク)、低輝度プラーク(エコーで黒く映るプラーク)、急速に拡大するプラークなどは、脳梗塞発症リスクが高いとされており、慎重なフォロー、場合によっては治療が必要になる場合もあります。
③狭窄病変の狭窄率
動脈硬化性病変が進行し、一部狭窄してしまっているような場合には、その狭窄率(血管の狭さの度合い)を評価します。
特に狭窄率が70%以上(70%以上狭くなっている)の場合や、症候性(ふらつきやめまいなど)の場合には、治療が必要になる場合もありますので、慎重に評価を行います。
狭窄病変を認めた患者さんについては、基本的には次の検査(MRIなど)や治療が必要になるので、連携医療機関へ紹介いたします。
さいごに

動脈硬化を評価するのに有用な頸動脈エコー検査についてお話しました。
頸動脈エコーは、体に負担が少なく、簡便に動脈硬化を詳細に観察できる優れた検査です。
当院での検査の場合、頸動脈エコー検査に加えて、血圧脈波の検査を同時に行うことが多いです。
全身の血管は繋がっているので、首の血管に問題があれば、手足の血管にも問題がある可能性が高いためです。
また、当院では、各種検査の際に、必要性を説明しております。
頸動脈エコー、血圧脈波の際には、
・動脈硬化の評価のためです。
・血管の中のゴミがどれだけ溜まっているかみてみましょう。
・症状があるので、血管に問題がないかみてみましょう。
様々な声かけがあります。
今やっている検査は何の目的なのか?
気になった際には是非わたしに聞いてみて下さい。