2024年12月16日
寒さが強くなるこの時期、インフルエンザなどの冬に流行する病気のニュースが出てきましたね。
そんな中、ニュースにはなりにくいのですが、実はこの時期に便通が悪くなる方がいます。
そこで、今回は「便秘」をテーマにお話ししてみようと思います。
便秘とは
皆さんは自分で便秘だなと感じることがあると思いますが、どんな時でしょうか?
便が硬く、便の回数が少なくなった時ではないでしょうか。
日本消化器病学会などが出しているガイドラインには、
「便秘とは、本来体外に排出すべき糞便を充分量かつ快適に排出できない状況」
と書いてあります。
これは、食事量はひとりひとりで違う為、単に便の量や回数が少ないだけでは便秘とはいわず、便の硬さだけでも便秘とは言えないのだと思います。
また、原因も様々であり、便秘なのでこの薬をのんでおけば大丈夫!ということもないので、市販薬で効果が不十分や、市販薬では心配など、お困りの場合には、まずは近くの医療機関へご相談ください。
近年、慢性便秘症が、心血管疾患の発症・死亡リスクの上昇、パーキンソン病や腎疾患の発症のリスクの上昇に関与する可能性がいわれており、長期予後に負の影響がある可能性が言われています。
便秘と性別
すこし古いですが、平成25年の国の行った調査では、人口1.2億人の内、男性2.6%、女性4.9%の便秘の症状があった方がいたとされています。
その中でも特に50歳以下の若い方では、女性の比率が高かったようです。
年齢によっては、便秘に悩む人の数は、女性は男性の3.5倍であったとされています。
ある有名な市販の便秘薬のパッケージには女性が描かれており、便秘で悩む女性に向けて商品開発されているんだろうなと私自身は感じてしまいました。
女性の中では、ダイエット経験がある方や昼食摂取量が少ない人で便秘が多く、よく噛んで食べる方は便秘が少ないとされています。
このように若い女性では、男性の数倍、便秘で悩んでおり、さらに妊娠・出産の時期には、その時期特有の原因で便秘となる事がある為、便秘で悩む女性が多いのが実情です。
妊娠中はかかりつけの産婦人科の先生が便秘薬を調整してくれるかと思いますが、出産後は、産婦人科の先生への通院がなくなる為、通院をやめてしまうこともあるかと思いますので、便秘で悩んでいる方は、近くの医療機関を受診しましょう。
便秘と年齢
便秘は、男性では、年齢を重ねるにつれ、悩む方が増えますが、女性は20歳~50歳では大きく変化がありません。
そして、60歳を超えると男性・女性ともに右肩上がりに悩む方が増え、70歳台では、男女の性差がなくなってしまいます。
加齢により、便秘になりやすいともいえるのですが、大腸がんなどの病気や他の病気への飲み薬が便秘を引きおこすことがあるので、これも影響しているでしょう。
便秘の原因
1)水分不足
口からの水分摂取が少ないと、便が硬くなり、大腸をゆっくりと運ばれる間に腸による便からの水分吸収が起こり、さらに便が硬くなり、便秘を来します。
冬は夏に比べて気温が低いため、喉の渇きを感じにくくなります。また、感染対策などでマスクをしている方も多く、口や鼻のなかが乾燥していると感じにくくなる傾向にあります。
その為、水分摂取が少なくなり、この時期便秘で悩む方が増えるひとつの原因と考えられます。
2)生活習慣
朝食を食べない方は、食べる方に比べ、2倍以上も便秘で悩む方が多いというデータもある為、朝食摂取は非常に重要とされています。
適度な運動も必要であり、運動不足も便秘の原因といえるでしょう。
便秘の原因というと食物繊維の摂取不足といわれますが、もちろん摂取不足は便秘との関連はあるとされていますが、充分量摂取されている方が、それ以上の摂取することは便秘の改善につながるデータはありません。
3)病気によるもの
大腸癌、Crohn病や腸が重なってしまう腸重積、他膠原病や飲み薬による便秘など原因は多岐にわたります。細かな分類は専門的な検査を必要とする為、中々診断するのが難しい場合もあります。
自分でできる便秘対策
1)水分摂取
充分量の食物繊維を摂取した方に限ってのお話ですが、水分2Lと1Lの方を比べた研究では、2L摂取の方の便の回数が多かったとの結果であり、水分摂取は自宅でできる最も簡単な方法と言えます。
しかし、屋外での仕事の方や、接客対応が必要で、日中水分摂取が難しい方もいると思いますので、当クリニックの外来では、起床後に歯磨きをして、コップ1~2杯の水分をまず摂取することをおすすめしています。
日中も定期的に水分を摂取するのが望ましいと思いますが、中々難しい方はお試しください。
2)食物繊維の摂取
食物繊維を充分量摂取するのが大事とされていますが、実は食物繊維摂取量と慢性便秘には必ず関係があるわけではありません。
不足している方については、食物繊維は便秘に有効なので、ここは間違わないようにしたいです。
3)運動
1日15分、週5日の腹壁マッサージが便秘症の改善に有効とされており、自宅でできる対策のひとつです。
有酸素運動も有効とされていますので、まずはご負担の少ない、週3回、30分程度の散歩から始めてみてはいかがでしょうか。
当クリニックでは、肛門診療もやっており、便秘+おしりのお悩みの方も多くおられます。
当たり前ですが、排便の度におしりを便が通過するので、便の状況が悪いとおしりの状況は悪化します。
年齢、男女問わず、中々便秘が改善しない方、市販薬をのんでもよくならない方など、便秘でお困りの方はまずは一度当院へご相談ください。