2025年2月07日

はじめに
内科担当の小林登です。
「ピロリ菌」という言葉は多くの方が耳にしたことがあるかと思います。
2024年、当院では胃カメラを約250件件施行し、その内、約10%弱の方がピロリ菌陽性の判定で、除菌を施行しました。
除菌をした方の中で、ピロリ菌という言葉を耳にしたことがあっても、中々詳細をご存じの方はおられませんでした。
そこで、今回は、ピロリ菌について少し詳しくお話してみようと思います。
ピロリ菌とは?
正式には、Helicobacter pyloriと言います。
もともと胃の内部は、pH1の強酸性の為、細菌は生息できないと考えられていました。
しかし、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生しており、この酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで、局所的に胃酸を中和することによって、強酸性の環境下で生息していることが分かっています。
また、ピロリ菌は胃粘膜に感染して胃炎を引き起こすことが知られています。
このピロリ菌による慢性炎症が様々な疾患との関連が言われており、
・胃癌
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
・胃MALTリンパ腫
・特発性血小板減少症
・機能性ディスペプシア
などの疾患については、ピロリ菌の除菌が強く勧められています。
ピロリ菌の感染経路・時期

海外、日本とも、ピロリ菌の主な感染時期は3~5歳で、それ以降の感染はすくないことが報告されています。
ピロリ菌は、主に口を介して感染することが分かっており、
・感染している大人が赤ちゃんに口移しで食べ物を与える
・汚れた水や食べ物(特に井戸水など)を摂取する
上記のような状況で感染することが知られています。
また、家族内での感染が多いことから、家族に陽性者がいないと子供がピロリ菌感染を受ける可能性は低いとされています。
それゆえ、ピロリ菌感染を言われている方は、お子さん、お孫さんへ感染させないためにもピロリ菌の除菌を検討してください。
ピロリ菌と胃癌の関係
ここまでお話してきたピロリ菌ですが、胃癌の原因であることが分かっています。
なんと、ピロリ菌感染の方は、15倍以上胃癌のリスクが高まるのです。
ただし、このピロリ菌が原因の胃癌については、後述する治療(除菌)で胃癌のリスクが低下することが分かっています。
また、ピロリ菌感染率は、上下水道の整備などで低下しつつあるのが現状です。
また、一度ピロリ菌に感染した方への除菌も進んでおり、徐々にピロリ菌が原因の胃癌の患者さんは減少しつつあります。
ただし、地域差もある為、
・いままで胃カメラしたことがない
・過去にピロリ菌感染を言われた
上記の方は、一度ピロリ菌のことについて前向きに考えてみてください。
ピロリ菌の治療~飲み薬~

ピロリ菌がいるかどうかの検査は、血液検査、便の検査、内視鏡での検査、息を吹く検査など様々あります。
人間ドッグなどでもオプションとして選択できる施設もあります。
上記の検査で、ピロリ菌感染を指摘された場合、内視鏡検査が必要です。
ピロリ菌の検査+内視鏡検査
上記を組み合わせることで、最終的に診断を行い、治療を行います。
治療は、1週間、組み合わせの処方薬をのむだけです。
ただし、過去に薬の副作用・アレルギーがあった方には、組み合わせの変更を要しますので、必ず申し出てください。
佐賀県で行っているピロリ菌対策~未来へ向けた胃がん対策推進事業~
佐賀県では、佐賀県の胃がんの粗死亡率は、全国平均よりも高いことから独自の対策が県としてとりおこなわれています。
以下は、がんポータルさがより抜粋しております。
ピロリ菌除菌は、年齢が若いうちに実施することが効果的であり、子どもたちの将来及び次世代の胃がん発症リスクを低減できます。
【“子育てし大県”の一環として事業展開】
都道府県単位では全国初の取組として、平成28年度から実施しており、佐賀県の子どもたちの将来の胃がん発症リスクを低減するため、引き続き事業を実施していきます。
除菌治療が身体的に可能で、親等の保護者が適切に子どもを管理し、確実に治療へ結びつけることができる最適な年齢として「中学3年生」を対象に実施しています。
保護者の同意のもと、学校の健康診断で提出される検尿(腎機能検査)の残りの尿でピロリ菌検診を実施し、陽性者は、便検査(自宅に検査キットを送付し、自宅で採取した便検体を提出)で要治療者を判定します。
佐賀大学(医学部小児科)に事業委託し、県内全ての中学3年生を対象に実施しています。
参照:がんポータルさが
最後に

ピロリ菌についてお話しました。
当院では、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を予約にて行っております。
出来る限り検査を受ける方の苦痛を軽減するべく、様々な工夫で行いますので、
・以前の胃カメラで「おえっ」とした
・胃カメラは辛いと聞いている
・何となく嫌だ
上記のような方は、ぜひ一度当院へご相談ください。