2025年1月06日
はじめに
皮膚科担当の副院長、小林佑佳です。
新年明けましておめでとうございます。
早速ですが、今回はクリニックを受診される方の中でこどもからご高齢の方まで相談の多い、「イボ」についてお話ししますね。
本年もよろしくお願いいたします。
イボとは
皮膚から盛り上がっている小さなできものを一般的に「イボ」といいます。
「イボができた」と患者さんが受診されますが、実はさまざまの病気が含まれています。
最も多いイボは、ウイルスが感染してできるもので、尋常性疣贅と呼ばれます。
その他にも、子供に多い水いぼ(伝染性軟属腫)、加齢によるイボ(脂漏性角化症)、首や脇の下などにできる柔らかいイボ(軟性線維腫)、赤いイボ(老人性血管腫)などがあります。
今回は、それぞれの原因、治療方法について説明していきたいと思います。
尋常性性疣贅―どうしてできるの?
ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス/HPV)を言うウイルスの一種が皮膚に感染してできます。
このヒト乳頭腫ウイルスには多くの種類があり、普通の「イボ」以外にも、尖圭コンジローマや子宮頸がんの原因ウイルスとして話題になることもあります。
ウイルスが、小さな傷などから皮膚に入り込み、「イボ」をつくると考えられています。
ウイルス感染した細胞は、細胞分裂が活発になり、まわりの細胞を押しのけて増えます。
こうしてできた感染細胞の塊が、よく見られる「イボ」の正体です。
外傷を受けることの多い手足に多いのはこのためです。
尋常性性疣贅―治療法は?
治療法は、液体窒素療法、内服療法、貼り薬などを行います。
液体窒素療法は-196度の液体窒素でイボを冷凍させてウイルスに感染した細胞を破壊させる方法です。
1~2週間ごとに患部に当てて治療します。痛み、色素沈着、赤み、水ぶくれなどの合併症があります。
尋常性性疣贅は、1回の治療で完治することはなく、複数回の治療が必要となります。
漢方の内服療法や貼り薬を併用するなど患者様に適しているものを選んで行います。
放置すると家族内でも感染することがありますので、できるだけ触らないように、早めに治療した方が良いでしょう。
水いぼ(伝染性軟属腫)―どうしてできるの?治療法は?
尋常性疣贅も水いぼも、子供に多い病気で、ウイルス感染でできる点は似ていますが、ウイルスの種類が異なります。
水いぼは伝染性軟属腫ウイルスが原因となります。
水いぼは、表面がツルツルして、光沢のある皮膚の盛り上がりで、てっぺんが少し凹んでいるのが特徴です。
水いぼは体にできることが多いのも特徴です。
水いぼは長期間かけて自然に治る病気ではありますが、感染が拡大したり、掻き傷からとびひになったりする可能性があります。
治療は、あらかじめ麻酔テープを貼ったあと、ピンセットで除去する方法が一般的です。
水いぼにかかっても保育所や幼稚園、学校を休み必要はありません(日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会・日本小児感染症学会:学校感染症 第三種 その他の感染症「皮膚の学校感染症に関する統一見解」より)。
また、プールに入っても構いません。
ただし、互いの皮膚の接触でうつる可能性があるので、注意が必要です。水着やタオルなどは共有せず、プールの後はシャワーで洗いましょう。
水いぼの部分は水をはじく絆創膏で覆ったり、ラッシュガードを着用したり、まわりの子供に配慮してください。
*保育所や幼稚園、学校のルールがある場合は、そちらに従ってください。
加齢によるイボ(脂漏性角化症)―どうしてできるの?治療法は?
加齢により生じる「イボ」であり、老人性色素班(いわゆる“シミ”)から盛り上がってくることが多いです。
顔や頭、体などに、1~2cmほどの大きさの境界明瞭な隆起性の皮膚良性腫瘍です。
診察ではダーモスコピー検査(拡大鏡を用いた検査)でほぼ診断がつきます。
治療法は、液体窒素療法を1~2週間おきに行います。
治療後は、赤み、水ぶくれを生じることもありますが、かさぶたが落ちるように表面がおちて改善していきます。
色素沈着が数か月残る場合があります。
一度では治療できないことも多く、通院の回数が多くなる場合もあり、サージトロンによる焼灼術(保険適応外)を選ばれる方もいます。
軟性線維腫―どうしてできるの?治療法は?
首や脇の下などにできる柔らかい皮膚腫瘍です。
小さなものは“スキンタッグ”と呼ばれることもあります。
これは皮膚の下の膠原線維が増生してできており、一種の加齢変化と考えられています。
治療法は、大きさにもよりますが、手術で切除や液体窒素療法などがあります。
数が多い場合、液体窒素療法では色素沈着が目立つこともあるので、保険適応外になりますが、サージトロンによる焼灼術も選択できます。
赤いイボ(老人性血管腫)―どうしてできるの?治療法は?
体や顔に見られる、光沢のある赤い小さなできものです。
加齢とともに増加する、反応性の血管増殖が原因と考えられています。
当院ではサージトロンによる焼灼術を行っております(保険適応外)。
サージトロンによるイボ焼灼術
イボの種類によって、当院ではサージトロンによる治療も選択できます。
サージトロンとは、高周波ラジオ波メスのことです。
通常の電気メスのおよそ10倍の高周波数帯を使用しており、周囲の組織の熱変性や炭化、出血が最小限にとどめることが可能です。
麻酔(注射、テープ、クリームなど)を行って、細かくペン先を動かすように少しずつとっていきます。
焼灼後は、被覆材を貼付し、施術当日からシャワーを浴びられますが、患部は少し染みる可能性があります。
数や大きさによって値段は異なりますので、お気軽にご相談ください。
*こちらの治療は自費診療となりますので、10割負担となります。