2025年6月16日

はじめに
皮膚科担当の小林佑佳です。
思春期や大人になってからも悩まされる「ニキビ」。
以前のコラムで、ニキビで悩む患者さんのなかで、実際に医療機関を受診する割合は、わずか10~15%程度とご紹介しました。
また、せっかく受診しても治療の途中で通院を中断してしまう患者さんも多く、継続して治療を行う割合も低いと報告されています。
中断してしまう理由の1つに、薬にかぶれてしまった・使いにくかったという問題があります。
これまでにも「ベピオゲル」や「ベピオローション」など、ニキビ治療薬はいろいろ登場してきました。
そして今回、新たに「ベピオウォッシュゲル」が登場しました!
今回は、この「ベピオウォッシュゲル」がどんな薬で、これまでの「ベピオシリーズ」とどう違うのかを、わかりやすくご紹介します。
そもそも「ベピオシリーズ」って?
ニキビで悩む患者さんに、診察室でまずお話するのは、「ニキビは、まずは保険治療です!」ということです。
「ベピオシリーズ」は、皮膚科でよく使われるニキビの治療薬です。
主な成分は過酸化ベンゾイルというもので、毛穴のつまりを改善させたり、ニキビ菌(アクネ菌)をやっつけたりしてくれます。
これまでに使われていたのは次の2つ
●ベピオゲル:お肌に直接ぬるゲルタイプ。皮膚にしっかり密着して効きます。
●ベピオローション:液体タイプで、広い範囲にもぬりやすい。保湿効果もあり、ゲルタイプより刺激が少ない。
どちらも効果はありますが、ぬったあとに皮むけや赤み、かゆみといった副作用が出ることがあるのが難点でした。
ぬる量や範囲を徐々に増やしていくことで、副作用を少なくする工夫はありますので、診察時にご紹介します!
新しい「ベピオウォッシュゲル」の特徴は?

「ベピオウォッシュゲル」は、洗い流すタイプのニキビ治療薬です!
・1日1回、洗顔後に顔全体にぬってから、5~10分おいて洗い流すだけ
・肌に薬が長く残らないため、副作用が出にくい
・顔全体に使いやすく、毎日のスキンケアの中に取り入れやすい
・9歳以上の患者さんに処方できる
「洗い流す」ことで、これまでのベピオシリーズで感じやすかったヒリヒリ感や赤みは、かなり軽減されると言われています。
これまでのベピオシリーズ(ゲルやローション)は12歳以上が対象でしたが、新しい「ベピオウォッシュゲル」は、なんと9歳から使えるようになりました。
これにより、小学生のニキビ治療にも選べるお薬が広がったのです。
この薬のメリットは?
洗い流すタイプにしたことのメリットを3つ、まとめます
- 肌への接触時間が短い→過酸化ベンゾイルの刺激がやわらぐ
- 洗顔のように使える→汚れや皮脂も一緒に落とせる
- 洗い流すため脱色の心配がほとんどありません→従来品は衣類や髪の毛などの脱色に注意が必要
つまり、「治療」と「洗顔」を一緒にできる、新しいスタイルのニキビケアです
効果に違いはあるの?

「ベピオウォッシュゲル」と従来の「ベピオゲル」「ベピオローション」は、いずれも有効成分は同じ「過酸化ベンゾイル」です。
そのため、基本的なニキビへの効果(角質をやわらかくし、毛穴のつまりを防ぐ・アクネ菌を殺菌する)という点では、同等の効果が期待されます。
効果自体は同じでも、肌に薬が触れる時間が短くなることで、ベピオウォッシュゲルの方が副作用は少ないと言われています。
ただし、重症ニキビには従来の方か効果を実感しやすい場合もあります。
つまり、「どちらの効果が強いか」というよりは、「使いやすさと肌へのやさしさのバランスで選ぶ」イメージです。
ニキビの程度や肌の敏感さで、患者さん一人ひとりにあったお薬を選びたいと思います。
値段の違いは?
治療を続ける上で、お薬代も気になるところ。
若干ではありますが違いがありますので、2025年6月時点での薬価をご紹介します。
ベピオゲル 87.1円/1gあたり 15g規格で1306.5円(3割負担で約392円)
ベピオローション 94.9円/1gあたり 15g規格で1423.5円(3割負担で約427円)
ベピオウォッシュゲル 99.6円/1gあたり 20g規格で1992円(3割負担で約598円)
薬剤費のみの計算です。
さいごに

ニキビの状態や肌の敏感さによって、向いている薬は変わります。
どれが、自分に合っているか一緒に考えていきましょう。
ニキビ治療は、続けることが大切です!
今回の「ベピオウォッシュゲル」は、治療を少しでもラクに、続けやすくするための新しい選択肢となります。
毎日のケアの中で、正しく・やさしくニキビと向き合っていきましょう。