2024年12月23日
はじめに
インフルエンザが大流行しています。
実際当院の発熱外来でも多くの患者さんをインフルエンザと診断しています。
ここで、インフルエンザの診断を難しくするのが、発症間もない患者さんなどで多く見られる偽陰性(感染しているのにマイナスと出てしまうケース)です。
この偽陰性を考えながら、日々の診療を行っていますが、受診で来た方の中で、「長引く咳」を相談される方が多くいます。この長引く咳の中に、今回のテーマであるマイコプラズマ感染症が混じるわけですが、中々どうして診断が難しいのが現状です。
今回は、ニュースでも取り上げられているマイコプラズマについてお話してみようと思います。
マイコプラズマについて
今年大流行している「マイコプラズマ感染症」
肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマニューモニエ)の感染による呼吸器の感染症です。
4年程度の周期で大きな流行があるといわれています。
今年は患者が急増していて、大流行した8年前以来の(2016年)水準となっています。
肺炎なのに体力がそれほど落ちず、マスコミでも最近「歩く肺炎」として話題になっていますが、やはり世の中の皆さんに詳しく知られているものではないようです。
全体の約80%が14歳以下の小児です。
大人の方も感染しますので、注意が必要な病気です。
症状は?
潜伏期間は2〜3週間。
インフルエンザやRSウイルス感染症などの呼吸器疾患に比べて長いです。
発熱、喉の痛み、だるさ、頭痛など風邪に似た症状から始まります。
席は発熱後3〜5日から始まり、コンコンと乾いた咳が多いです。
長引くと咳は徐々に強くなり、解熱後も咳だけが残り3〜4週間続きます。
診断は?
マイコプラズマは診断が難しい・・・。
では、そんなマイコプラズマ、どのように診断するのでしょうか?
先ほどお話をした症状の特徴(乾いた咳が多い、痰が少ない、そして痰が少ない影響で聴診器から聴こえる呼吸の音がきれい)が判断材料となります。
子供や若い方で、病気を持っていないようなもともと元気な方が、上のような症状をきたしていたら、その可能性は高くなります。
またレントゲンやCTでもすこし他の肺炎とは違う特徴があります。
インフルやコロナみたいな迅速検査もありますが、特に大人では偽陰性となってしまうこと少なくなく、決め手にならない場合も多くあります。
採血で抗体検査も可能ですが、結果がその日には出ないこと、感染したてだと数値が上がらないことがあることから、どちらかというと事後確認に使う検査という位置づけて考えています。
このようにマイコプラズマの診断は、未だに医師の知識、経験とカンに頼る要素が大きいのが現状です。
特にマイコプラズマの流行している今年は、必ず頭に入れておひとりおひとり診察にあたっています。
治療法は?
抗菌薬を内服します。
マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン、エリスロマイシンなど)をまず内服します。通常内服後2〜3日で解熱しますが、薬が効かないものも増えており、
テトラサイクリン系(ミノマイシン)やニューキノロン系(トスフロキサシン)という抗菌薬を使うこともあります。
*テトラサイクリン系は、8歳未満、妊婦の方へは使用できません。
これらの治療をしている間に良くなることがほとんどです。
耐性菌の出現
さらに、マイコプラズマの診療をややこしくしているのが、耐性菌の出現です。
耐性菌とは、ウイルスや細菌が薬剤に対する抵抗力を持ってしまい、薬で増殖を抑えられなくなってしまうことです。「病原体が盾を持ってしまい、薬が効きにくい状態」をイメージしてもらうと少しわかりやすいでしょうか。これはマイコプラズマに限らないのですが、耐性菌の出現が問題となっており、ひとつの薬剤で効果がなくなってしまう為、他の薬剤へきりかえないとダメなのです。
その頻度は2020年頃に20~30%と報告されています。
20~30%というと、私自身は結構高いなと感じる頻度であり、日ごろの診療でも遭遇する為、この耐性菌を頭において、治療を進めていますが、非常に悩ましい問題です。
家庭でのケア
・水分補給と安静を心がけてください。
・咳がひどい場合も多いので、加湿器などでお部屋を加湿しましょう。
・のどの保湿にはマスクも有効です。
・処方された薬は決められた期間はきっちりと内服してください。
予防のポイント
流行している時期には、手洗い、マスクの着用などの予防を行いましょう。
現在のところ、予防するワクチンはありません。
当院の発熱外来
通常外来の方との導線をできるだけ分け、感染対策に注意をしておりますので、安心して受診してください。
受診される際には、便利なWEB予約をご利用ください。